精神医学 2026年5月号(増大号) [雑誌] キーワードで読み解くこれからの精神医学・精神医療の10の潮流
発売日: 2026年5月19日
ISBN: 4912056270565
5,610円
精神科臨床に携わるうえで知っておきたい,近年研究が盛んに行われている,あるいは今後の発展が期待されるような,比較的新しく登場してきた精神医学・精神医療の領域の概念や用語などが多数存在します。本増大号では,第一に,これらの中で重要と考えられるものをキーワードとして幅広く取り上げ,それぞれが重視されるようになった背景(研究の進歩や社会の動向など),臨床に与えるインパクト,課題や展望などを理解できるような解説付きのキーワード集とすることを意図しました。第二に,それらのキーワードから,現在から未来へと向かう精神医学・精神医療の潮流を読み解くことを試み,読者とともに考える材料としたいと考えました。
そのために,まず,本誌編集委員が知恵を出し合って,現代において重要と思われる78のキーワードを選出しました。次いで,それぞれのキーワードについて精神医学・精神医療の潮流の観点から検討し,複数のキーワードに共通する性質を取り出した結果,合計10の潮流を抽出できると考えられました。10の潮流とは,すなわち,(1)カテゴリー診断を超えて,(2)個別化,(3)発達・進化の視点,(4)新たな神経メカニズム,(5)IT精神医学,(6)当事者自身が取り組む治療,(7)ストレングス,(8)日常体験と精神医学,(9)共同創造,(10)社会のなかの精神医学,です。
これらを概観してみますと,潮流の(1)〜(5)の5つは主として精神医学における潮流であり,精神疾患概念を問い直すもの(潮流(1)(2)(3))と,精神疾患を対象とした新しい科学によるアプローチ(潮流(4)(5))としてまとめられるでしょう。これに対して,潮流の(6)〜(10)の5つは主として精神医療における潮流であり,当事者主体の精神医療(潮流(6)(7)(8))と,社会の仕組みとしての精神医療(潮流(9)(10))としてまとめられるでしょう。このような分類に従って目次を構成することとしました。
キーワードの選択における恣意性は否定できませんので,今回取り上げた78のキーワードが,取り上げるべき重要な概念や用語をすべて網羅しているとは言えないかもしれません。しかし,そのような限界はありながらも,本増大号が重要なキーワードの理解に役立つだけでなく,これからの精神医学・精神医療の潮流を知る有益な手がかりとなることを期待しています。
(「特集にあたって」より)
【著者について】
I.精神医学の潮流を読み解くキーワード
1.精神疾患の概念を問い直す
潮流(1)カテゴリー診断を超えて:Research Domain Criteria(RDoC)/Hierarchical Taxonomy of Psychopathology(HiTOP)/ワンストップ・ケアに基づく若者メンタルヘルスサービス ほか
潮流(2)個別化:デジタル・フェノタイピング/測定に基づくケア/プロセス・ベースド・セラピー/難治性抑うつ ほか
潮流(3)発達・進化の視点:進化精神医学/ポリヴェーガル理論/ポリジェニックリスクスコア/トラウマインフォームドケア ほか
2.精神疾患と新しい科学
潮流(4)新たな神経メカニズム:Very-late-onset Schizophrenia-like Psychosis(VLOSLP)/精神展開剤による治療/抗アミロイドβ抗体薬/ニューロモデュレーション療法/ニューロフィードバック治療 ほか
潮流(5)IT精神医学:計算論的精神医学/ロボットの精神医療への導入/バーチャルリアリティ(VR)療法/デジタル治療 ほか
II.精神医療の潮流を読み解くキーワード
1.当事者が主体の精神医療
潮流(6)当事者自身が取り組む治療:当事者研究/アクセプタンス&コミットメント療法/弁証法的行動療法/効率型認知行動療法 ほか
潮流(7)ストレングス:ポジティブ精神医学/レジリエンス/ネガティブ・ケイパビリティ/サルトグラフィ ほか
潮流(8)日常体験と精神医学:ひきこもり/遷延性悲嘆症/ゲーム行動症/ためこみ症/悪夢障害/軽度行動障害/主観的認知機能低下/慢性疼痛と精神疾患 ほか
2.社会の仕組みとしての精神医療
潮流(9)共同創造:患者・市民参画/共同意思決定/価値精神医学/パーソナル・リカバリー支援/オープンダイアローグ ほか
潮流(10)社会のなかの精神医学:アンチスティグマ活動/メンタルヘルスリテラシー教育/精神疾患患者の子育て支援/伴走型個別就労支援(IPSモデル)/精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(いわゆる「にも包括」)/認知症基本法 ほか