なぜ会社は儲かっても人を豊かにできないのか?
発売日: 2026年6月23日
ISBN: 9784910818405
2,750円
数字はウソをつかない。データによれば、世界でほぼ唯一GDPが過去30年にわたって成長しなかった国が日本だ。政権が「成長戦略」を旗印に掲げようと、残念ながら日本人の実質賃金上昇率はインフレ率を大きく下回っている。たった今もなお貧しくなっているのだ。
多くのエコノミストたちは、その原因を「日本企業の生産性が低いから」と評し、「日本からなぜGAFUMが生まれないのか」と嘆いてきた。しかし、それは事実ではない。日本企業の成長率は決して低位のものではない。多くの大企業が過去最高益を続々と更新し、売上も株価も順調だ。日本人はずっと頑張ってきたのだ。
本書の最大の特長は、複雑な数値の動きを「グラフの形で見て直観的に理解する」ことができるように作られていることだ。著者は財務省の「法人企業統計調査」で発表されてきたデータをつぶさに入力し、わかりやすいグラフとして可視化した。視認性を重視して本文のグラフや表を4色で表現している。著者は経営コンサルなどを主業として複数の会社を経営しつつ、並行して九州大学大学院博士課程で研究も続けている。本書の骨格は、2019年に書かれた修士論文の論考を発展・充実させ、直近のデータを加えてアップデートし、分析を深化させたものだ。上記のグラフ類は鋭い着眼と普遍的な信頼性が認められ、すでに数多くの論者にも引用され始めている。日本の「失われた30年」の実態と原因・構造を、これ以上明確に説明したものはないと言える。
「企業は大きな利益を出しているのに、なぜ従業員に対してそれに見合っただけの分配がなされないのか?」「儲かった分はどこに行っているのか?」が問題の核心だ。結論を先取りするなら、一つは株主への配当に分配される比率が非常に高くなっている。背景には、アメリカ発の「新自由主義」「市場原理主義」の旗印のもと、グローバル金融資本が押し進めた「株主資本主義」とコーポレート・ガバナンスの制約が、雇用慣行も含めた伝統的な日本型経営を崩壊させ、日本企業の成長力と分配を著しく低下させてきたことがある。企業活動を評価する指標であるROE(自己資本利益率=株主が出資したカネ《自己資本》を経営陣がどれだけ高効率に運用して利益を生み出しているかという指標)の数値を維持・向上させるために人件費を可能な限り抑制し、さらに設備投資まで削減してきた。株価上昇のために自社株買いも頻繁に実行されてきた。経営は歪められてきたのだ。そのようにして数値を上げるために操作されて得られた大きな当期純利益は、株主配当の形で分配され、多くは大企業の大株主である外資系ファンドの元などに流出した。これが失われた30年の本質部分を形成している。
本書は日本企業と社会が陥ってきたこの悪循環からいかにすれば脱することができるか、脱グローバリズム経営の方向性と具体策までを指し示し、日本企業の経営者たちがいかなる哲学に基づいて経営を進めるべきかについての画期的な提案をしている。新しい日本型資本主義の再提案とも言える。ここに新たな注目エコノミストが誕生した。