花の家に生まれて 山ガールから伝統文化の世界へ
発売日: 2026年5月29日
ISBN: 9784160090866
2,200円
「少々オーバーな表現かもしれないが、私は覚悟を決めるとか、退路を断つという言葉が好きである。家元を継いだ後は、ただ一本の道を進むだけだった。それは平坦な道ではなく、いくつものピークを越えて遠くへと続く山道だった」(序文より)
華道家である著者は、真生流の創始者である祖父・山根翠堂、美術史学者の父・山根有三という家系に生まれました。学生時代には北アルプスを縦走するなど「山ガール」として自然を愛しましたが、やがて祖父の急逝を機に、華道の道へ進むことになります。
本書は、その後の華道家としての修業の日々、祖父亡き後の家元代行としての重責、そして結婚して、二人の子どもを育てながら家元として活動する多忙な日々を綴ります。出産後すぐに子どもを亡くすという深い悲しみを乗り越え、子育てと家元業を両立させる中で抱いた葛藤と、それを乗り越える「花の力」の尊さが共感を誘います。
父である山根有三が成し遂げた学術的功績や、真生流の全国的な発展、さらに文化功労者として顕彰されるまでの歩みも詳細に記録されています。また、若き日の山岳経験、海外での美術調査旅行、テレビ出演や多数の展覧会への出品など、華道家としての多彩な活動が、当時の美術界や社会の動向と絡めて生き生きと語られます。
華道という伝統文化の継承が、いかに深い責任を伴うか、そして人生の苦難や喜びが、いけばなの創作活動にいかに昇華されていくか。伝統文化の世界を背負う一人の女性の、芸術への情熱と家族への愛が詰まった貴重な記録です。